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【Wemake】想いは伝染する 積水化学 高齢者のQOLを向上するインソールチームで得た気付き

【創発】専門分野を掛け合わせる

専門性を持った人達と一緒に一つの事業について議論を繰り返していくと新たなビジョンが見え始めてくることがある。異なる領域をビジョンを共有しながら横断していくと、専門家にも分からなかったようなイメージがフッと湧き出てくる瞬間がある。これは、新たな知への挑戦であり、探検、発掘、発見の宝庫である。今まで個に委ねられてきた知が他の知と結びついた時に新たな化学反応が起こる。専門的過ぎて偏りがある意見もある。異なる分野の専門家同士が集まると、意見の対立があったりするものだ。ある側面から見れば妥当に見えても、一方からみると妥当ではなく、新たな問題が見えてくることもある。だからこそ、新規事業を起こす時には多角的な視点で物事を見ていく事が大切になってくるのだろう。

【伝達】想いは伝染する

当事者の悩みをいつも目の前で見続けている専門家は、当事者に最も近い視点からの意見と、専門性に基づいた知識から、課題や問題提起を常に醸成しているといえる。その為、提示される仮説というものは説得力と納得力のある力強い想いが詰まったものとなる。この想いを専門家が語り始めると、周りにいる人たちへと伝染していく。裏打ちされた想いは伝染していくものだ。今回の提案者である井口さんは、毎日当事者と対面して、対話を行なっている。


【チームビルディング】異なる考えを繋ぐビジュアライゼーション

今回結束したチームはマーケター、当事者、デザイナー、スポーツトレーナー、スポーツウェア企画者、理学療法士など異なる専門分野を持っている人で構成された。本コンセプトに共感して一緒にコンセプトをブラッシュアップして行きたいと集まったチームだ。そして主催者である積水化学工業の担当者の方にファシリテーターをして頂いた。提案者である井口さんは理学療法の世界から、健康に関する科学的視点から、インソールによる問題解決を図る提案をしていた。


デザイナーである僕は井口さんの想いに寄り添いながら、チームでの議論を重ねながら、その考えをビジュアル化していった。言語化された概念を、俯瞰的なイメージへの変換作業を行った。そうすることで、其々背景知識が違う人達が集まるチームの中での共通認識を持てるようになった。具体的には目に見えていないようなイメージを明確にした時、初めてハッキリと分かる事がある。このグラフィックファシリテーションを続けていく事がチームビルディングにはとても大切なプロセスであると、僕自身も再認識できたし、発見の連続だった。

【二人称のプレゼンテーション】あなたの為に

チームの中の一人が率直な意見を言った。

「井口さんの言ってる事分からない...」
「途中から難し過ぎてついていけないの...」
「ちょっとカッコつけ過ぎなんじゃない?」
専門家としては論理的に科学的知識背景を元に冷静に話をしていた井口さんの言葉は僕にはとても新鮮だったし、未知の世界の話だったので興味深く聞いていたが、一方ではあまりに論理的過ぎる話でつまらないという意見も出てきた。とはいえ、井口さんはどう説明したら、伝わるのか見出せていなかった。

打開する方法を井口さん自身が導き出した。おばあちゃんの為にしてあげたいこと。という身近な人達のための提案にシフトしたことによって、プレゼンテーションが一気に具体化されていった。そうなると、聞いといる方としては、あぁ、あの人の為に。と自分の大切な人と重なり合わせて話を聞く事ができるようになるし、井口さん自身も、最も身近な大切な人の為に出来ること、という当事者意識を提案内容に込めていくとができるようになったのだと思う。

【Work Life】生活の中に溶け込むIoT

誠に失礼ながら洗濯物を干したり、子供の歯磨きをしながら、TV会議をさせていただく事が多かったのも事実であり、ごく一般的な会議ではあり得ない光景が目の前に展開されていたことだと思う。それを快諾しては頂きながら、家事をしながらでも議論に参加できる事で、チームの空気感や議論の内容を常に把握することが出来た。


ワークライフバランスは仕事と生活のバランスを取っていくことだとすれば、その境界が曖昧になり、生活の中に仕事が溶け込んでいくような感覚を味わう事が出来た。日頃の仕事では絶対にあり得ない感覚だ。さらに、自分と仕事で考える課題と問題は、今まで以上に密接に結びつき、同じ悩みを抱えている当事者同士で問題解決を図っていくためのプロジェクトが自然発生的に立ち上がり、共感する専門家が自主的に集まって、ソリューションを考えていく。そんなチームがオープンプラットフォームを利用して、これからたくさん出てくるはずだ。

事業創出を共創する社会とは?